居坐りのひ
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第15回AAF戯曲賞最終候補作。世界の端っこ(もしくは中心)を見つめるような作品を発信する「いかだ辺境劇場」採択。
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洪⽔が起こったあの⽇。多くのものは海へとかえり、いつしか⾬は降らなくなりました。くる⽇もくる⽇も⽇照りがつづいたので、地⾯の⼟は乾いてしまいました。川という川が⼲あがり、もうどこにも流れることはありません。少⼥が⼀⼈、岩肌に⾝をもたれています。彼⼥は歩くことができません。だから、おわりゆく⼀⽇をずっと⼀⼈で⾒ていました。草が⽊が花が枯れて、⾍も⿃も蛇もみんなが息たえていきました。目に浮かばなくなった、かつての身内だった人たち、身近な人たち。そんなものは、とうのむかしになくなっていました。でも、彼⼥は泳ぐことができました。⾜がないかわりに鱗をまとった尾があったからです。こうして、彼⼥はあの⽇からずっとそこへ居坐っています。船乗りがやってきます。真っ二つになったさおを⼿にさげて。ここに、彼以外の人間は⼀⼈もいませんでした。彼は「船乗り」と名乗ります。そして⼀⾔、彼⼥へ告げます。「ぼくは遠くへ⼈を乗せていくもの」と。 -
2015年5月11日(月)~12日(火)RAFT 初演
作・演出/ピアノ演奏 = 杉本奈月(N₂)
舞台美術/ヴァイオリン演奏 = 秋山真梨子(N₂)
船乗り/落とし子 = 永富健大
人魚/歌歌い = 加藤南央
記録写真 = 小嶋健介
主催|NPO法人らふと
制作|N₂ -
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