母に捧げる物語
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母は定年後の再雇用二年目で乳ガンになった。多美は嫌がる母を説得して手術を承諾させた。転移を恐れたのとこの機会になんとしても父の事を知りたかった。娘として当然なのに何故か母にはぐらかされてきてしまった。多美は建築士の資格で設計事務所に勤めていた。ある日社長から特命を受け施主に会った。書斎の改築に安全と効率を図った企画を提案し共感を得て親しくなった。そのとき施主は山下奉文将軍が投降した時一緒に逮捕され将軍は軍事裁判で死刑を宣告され処刑の日が父の戦死と同一なのは母が君に告げたくない事情を隠しているに違いないから母を詰問しないで自分で調べなさいと言われ国会図書館で調べることにした。手術に成功し養生している母に多美は母の好きな料理を用意して調査の結果を報告した。母は身をよじるようにやっと真実を話してくれた。それは娘の知らない驚愕の事実だった。
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