スムージ―よ、永遠に
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深夜の通販番組を見て衝動買いしたミキサーは久しぶりに当たりだった。朝、真新しいミキサーで作る特製ドリンクはその昔、母静江が独自に考案したレシピをなぞったものだ。離婚後、看護士として働き、女手一つで育ててくれた。その母が実家の階段から転落し緊急入院した。以来、一人娘の凛子の生活は変わってしまった。全てにおいて余裕がなくなり、恋人ともしっくりいかなくなった。だが、そんなことより何よりも、静江の前に謎の鳥が出現したことの方がもっとやっかいな問題かもしれなかった。
感染症拡大で病院は全棟封鎖に。その期間中、静江は認知症を発症してしまう。予兆は見過ごされ、解除後ようやく診断がおりたが、ベッド数確保のためか退院を促された。否応なしの介護生活。ヘルパー達の力を借りて母を支える凛子。なぜか急接近してきたデイサービスの男性職員佐藤。母娘はやがてとんでもないトラブルに巻き込まれてしまう。
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介護体験や感染症拡大中だった頃の様子を残しておきたいと思って、書き上げた作品です。
社会の片隅でささやかに生きた、どこかしらにいそうな母と娘の記録と記憶。埋もれさせないために。
クオークの会戯曲集『海風』に収録(2022年3月31日発行)
本作は、当時の作品を加筆修正したものです。 -
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