肥前松浦兄妹心中
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岡部戯曲の特色のひとつは、本人創案の九州弁である。場所もほぼ一定で、松浦という名の架空の地。そこに生きる庶民の群像が太いタッチで描かれる。松浦がかっては産炭地として栄え、今は無残に寂れ果てたという設定から、必然的に社会的な視野が広がる。松浦の栄光と没落は、石炭から石油へ転じた国家のエネルギー政策に関り、その角度から、この地の変遷の有り様は、近代国家としての日本の推移に深く関係する。その広い透視図の上に、兄妹心中に追い込まれていく男女を中心に展開するのが本作である。
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驚くべきエネルギーと陽性の笑いとさわやかな叙情に溢れた作品。つまり、喜劇的視点から、人間と世界をまるごと、真正面から見つめようとしている作家で、軽くいなしたり、薮睨み的に見つめたりする作品を見馴れた目からすると、このおおらかな健康さに戸惑うかもしれない。その台詞は、この戯曲の中心的イメージである海そのものにも似て、たくましくうねり、なみたち、崩れ、ほとばしる。ダイナミックな力強さととぼけた笑いに溢れた方言の使い方は秀逸である。 -
初演は、青年座
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