呼吸する肉塊
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ある町にある小さな施設の一室。
この部屋で10年前、中村はマスコミに向かって言った。
「誰かお父さんを死なせてあげてください」。
現在この部屋は簡素なパーテーションにより半分に区切られ、その奥には首吊り用スペースが設けられている。
あれから自殺率が5倍になり、皆が憧れていた先生も自殺してしまった。
そして10年、田中はこの部屋で仲間たちが来るのを待っている。
何事もなく同じ日々を繰り返す田中。毎日呼吸を繰り返しながら。
なぜぼくは呼吸をしているのだろう。ほんの数分呼吸を止めるだけでいいのに。これじゃあただの肉塊じゃないか。 -
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